毎年のように増えているコスプレ人口。コミックマーケット準備会が過去に発表した資料によれば、コスプレ更衣室利用者は2015年の冬コミ時点で男女合わせて約3万人となっている。また周知の通り、渋谷や池袋、川崎などではここ1、2年、ハロウィンが急激に浸透し、コスプレ文化が一般層にも認知された。コスプレ姿で屋外を回遊するケースもあり、今年のハロウィンに関する市場規模は「バレンタインデー」を上回るとも見られている。
そんななか、今“美少女マスク系コスプレ”というジャンルに変革が起きている。美少女マスク系コスプレは、文字どおり美少女を再現した着ぐるみ的マスクを着用してコスプレを楽しむ文化で、コスプレ人口全体からみると、まだまだニッチなジャンルと言える。ただ、ワンダーフェスティバルなどの造型系コスプレイヤーが多く集まるイベントでは、十数人の美少女マスク系コスプレイヤーが集まることもあり、注目が高まっているのは確かだ。生身の顔を出すわけではないので、性別も関係なく好きなキャラクターのコスプレに挑戦できる分野でもある。
1992年ごろからジャンルが開拓
この美少女マスク系コスプレのトレンドはいつ始まったのか。東京・浅草橋で美少女系コスプレマスク制作・販売を行っている「むにむに製作所」に取材を申し込んだ。
「確実なことは言えませんが、おそらく発端はヒーローショーなどで『セーラームーン』が出始めた頃(1992年頃)だと思います」と、マスクの原型を手がける西川さん。ショー内でキャラクターのマスクを見た際、「自分も欲しい」と思った方がいたのだという。
インターネットが普及した90年代後半には、気軽に情報交換が可能となったことで「自分ならマスクを制作できるから頒布します」という方が出現。その後、現在の大手マスク制作業者が現れ始めたというわけだ。
意外と高いマスクの値段に「まった!」
現在、オーダメイドでマスクを製作する会社はいくつか存在する。調べたところ、平均販売価格はおそよ10万円だった。「コスプレに挑戦してみよう」と気軽に手を出せる金額とはとはいえない。
なぜこのように高価になるのか。それは使用素材であるFRP(繊維強化プラスチック)にある。多くの美少女系マスクに使われており、ガラス繊維などの繊維をプラスチックの中に入れて強度を向上させた複合材料である。熱や時間経過での変形が起きにくい安定性のある素材で、扱いやすいのが特徴だ。
しかしながら、ヤスリによる表面処理や着色など、加工に時間と手間がかかる。「同じ金型から制作しても、それぞれ人の手を多く加えなければ完成しないため、人件費に多くのコストがかかってしまう(西川さん)」。
良いものを安く提供し、もっと多くの人にマスクを楽しんで欲しい。この想いと現実のジレンマに真っ向から挑んだむにむに製作所さんは、1つの解決法を思いつく。
それは、「頭の半分をソフビ(ソフトビニール)素材にする」こと。一度、金型を作ってしまえば表面処理や着色も不要で、そのまま使用することができる。なおかつ比較的軽く、扱いやすいのが強みだ。また、半面型で使用することで、さらなるコストダウンにも成功している。
これらの企業努力により、むにむに製作所では、マスク・ウィッグ・レンズアイ・アイラインをセットで2万円以内で提供。他社よりも安価で、比較的気軽に楽しめる価格帯となっている。また、サイズを小さくしているため、これまでの美少女系マスクだと体に身につけるコスチュームも着ぐるみにしないとバランスが悪いケースが多かったが、通常のコスプレ衣装でもマッチするようになった。
ちなみに、現在むにむに製作所では、スタッフに希望のマスクを伝えれば販売所で購入することも可能。試着して、気に入ったものがあればそのまま購入し、ハロウィンに参加――というのもアリだ。ただし、マスクは視界が狭いので移動には要注意。使用する場所を選んで楽しもう。
店舗情報
むにむに製作所
■住所:東京都台東区柳橋2-16-16
■電話:03-5829-6920
■営業:月~金(祝日は除く) 10:00~17:30
■公式HP:http://muni-muni.net/