2013年4月にサービスインし、11月中旬には120万人ものユーザーを得たブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』(以下、『艦これ』)。ゲーム性はもちろん、大日本帝国海軍の艦艇(軍艦)を美少女化したキャラクター「艦娘(かんむす)」も大きな人気を呼んでいる。関連グッズや書籍も軒並みヒットしている現状だが、もともとあった「軍艦」というジャンルにはどういった変化をもたらしたのか。今回は「プラモデル」に注目し、秋葉原で店を構える「ボークスホビー天国」の担当スタッフ・HARUさんに話を伺いに行った。
3本目の主力ジャンルへ急成長
――『艦これ』のヒット後、軍艦プラモデルの売れ行きはどのように変わりましたか?
HARU:2013年の6~7月ほどから「なんだか艦船模型が売れているなぁ」と感じ、あとでその発端が『艦これ』だと気付きました。うちでは8月の夏コミに合わせて特設コーナーを作ったのですが、直後に売上が跳ね上がりまして。その後も売り場を拡張しつつ、現在に至ります。
――売上的には?
HARU:前年比の大体5~6倍は上昇していると思います。もともと、うちの主力となるジャンルは自社で開発している飛行機モデル。そして、去年の『ガールズ&パンツァー』のヒットにより盛り上がった戦車モデルでした。この2ジャンルが中心になっていて、艦船模型は新作だけ抑えておく、いわばサブ的なポジションだったんです。それが今では3本目の柱といえるほどの一大ジャンルへと変貌しました。こちらとしても驚いていますよ(笑)。
――ユーザー層にも変化はありますか?
HARU:かなり変わりましたね。以前までは艦船模型ファンの年齢層は上がる一方でした。やはり今の10代はもちろん、30代の方でもすら戦艦などに対して憧れを抱くキッカケ、原体験ってないんですよね。そうなると自動的に年齢層は高くなっていきます。また今まで数千、数万種類の模型が作られた戦車と違って、もともと軍艦は4桁いかないほどしか種類がないうえに、作られていないものを探すほうが難しい。そうするとスケールなどで差を付けるしかない。そんな状態でした。
しかし、『艦これ』をプレイして「じゃあ、ちょっと作ってみようか」という新規のユーザー様が現れ始めました。ゲームが新たな購入動機の糸口になったんです。今では購入層の平均年齢はすごく下がり、なかには高校生ぐらい子もちょくちょく見かけられます。
――ゲームから入ってきた新規ユーザーを、もともとの軍艦プラモデルファンはどのように感じているのでしょうか?
HARU:当初は「チクショウ! 俺の好きな軍艦が女の子になっちまった!」とネガティブな反応が来ると思いました。しかし、意外に彼らもゲームを楽しんでいて、今まで自分たちしかいなかったジャンルに、形はどうあれ人が集まってきたことに誇りをもっていらっしゃいます。もちろん、すべての人が受け入れているわけではありませんが、概ね好意的だと思いますよ。
「改二」実装1~2週間後に売れ始めるプラモデル
――『艦これ』がヒットしてから売れ始めた軍艦プラモデルはありますか?
HARU:ブームが始まって火が付いたのは「島風」ですね。「島風」が一番人気で、続いて「長門」「金剛」「雷」「電」となっています。今言ったラインナップはかなり高いアベレージで売れていますが、その人気がずっと持続しているわけではありません。実は売れていない艦船はないんです。
――全体的に売れていると?
HARU:そうです。ゲームでそれぞれ推しの艦娘がいるように、プラモデルも同じことが言えるんです。今でも、毎週末には棚の商品が半分以上なくなりますよ。
――最近人気になったのは?
HARU:顕著だったのが「夕立」「衣笠」ですね。ゲーム内で「改二」が実装された(改造段階が新たに設けられた)ことがキッカケでした。ちなみに、実装されてすぐにプラモデルが売れるわけではありません。みんながその艦娘のレベルを上げたあと、なんですよ。愛着というか、艦娘への興味が芽生えてきた頃ですかね。大体、実装1~2週間後にワッと売れ始めるんです。
艦船模型を始めるために必要なモノとは
――艦船模型は他のプラモデルに比べてやや敷居が高いイメージがありますが、実際のところ初心者でも作れますか?
HARU:道具さえ揃っていれば簡単に作れますよ。ニッパー、デザインナイフ、あと重要なのがピンセットですね。細かいパーツが非常に多いので。あと、接着剤は瞬間的に乾くタイプをオススメします。細かいテクニックですが、100円ショップなどでトレイを買って、その上で作業すれば細かいパーツが飛んで無くなることが防げますよ。
本当にただ組むだけなら誰でもできます。とくにタミヤさん、アオシマさん、ハセガワさんから発売されている『ウォーターラインシリーズ』は”誰でも作れる”ことを目的としているので、入門編としては最適です。700分の1スケールで水に浮かぶ軍艦を眺めるのは楽しいですよ。このシリーズは旧日本軍の軍艦がメインなので、『艦これ』ファンにもオススメです。もっと精密なものを作りたいということであれば、フジミさんなどから発売されているエッチングパーツ(艦船模型をリアルに見せるのに有効なディテールアップパーツ)がいいですね。
――必要な費用、製作時間がどれくらいかかりますか?
HARU:物によりますが、キット自体は安いですよ。甲板シートやエッチングパーツをフルで揃えても7000円くらいです。製作時間もピンきりですが、ディテールアップパーツを利用して作ろうとすると、僕なら1週間はかかりますね。
――最後に軍艦プラモデルに挑戦してみようという方にアドバイスをお願いします
HARU:とにかく意外と簡単です! 国産メーカーの商品はユーザーにとって作りやすく、メーカー側の見せたいモノとのバランスが上手く取れていますよ。なにより「初心者の方でも作れる」ことが念頭に置かれていますから安心してください。さらに、色数も非常に少ないです。ほかのプラモデルように塗り分けやマスキングなど、缶スプレーでシュシュっとするだけで簡単にできますよ。もちろんやろうとするとキリがありませんが(笑)。
ちなみに、今後はアオシマさんが主導で『艦これ×ウォーターラインシリーズ』のコラボキットが発売されていきます。すでに「長門」や「愛宕」は出ていますが、12月には「雪風」、1月には「那珂」「島風」「赤城」が予定されています。また、フジミさんからは軽巡5艦がまとめてリニューアルされるなど、これからも艦船模型界は盛り上がっていくでしょうね。
――ありがとうございました!
店舗情報
ボークス 秋葉原ホビー天国
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