5月13日(日)まで東京・中野「SF gallery.」で、クリエイターたちが考案した“架空”のファミコンソフト製作展「MY FAMICASE EXHIBITION わたしのファミカセ展2018」が開催されている。
「わたしのファミカセ展2018」は、架空のファミコンソフト250本が展示されている作品展。展示ソフトは販売されている商品ではなくすべて虚構だが、「いかにもありそう!」と思わせるデザイン、タイトルの作品が多く、見るものを喜ばせている。
本展示は毎年5月に開催されていて、本年度で14回目。同ギャラリーの名物企画になっていて海外からの反響も大きい。今年は投稿された250作品のうち約150作品はアメリカ、カナダ、フランス、ドイツなどに在住する外国人クリエイターの作品だ。
この展示の面白いところは、ただソフトを飾っているだけでなく、展示会の「公式サイト」にはその作者が考えた「設定」が250文字以内にまとめられていることだ。
その一例を紹介しよう。チリ人イラストレーターJosé Salot(ホセ)さんは、レトロな美少女がいかにもなソフト「オリンピックカーリング」を出展。説明文は「もうすぐオリンピックです! トレーニングと準備が欠かせません。あなたのチームが出場できるよう、がんばろう!!!」との一文が添えてある。解説文はあえて古臭く、おそらく慣れない日本語で一生懸命まとめてくれたのだと思うと、愛を感じる。
グラフィックデザイナー・田口陵さんは「イヌのA之介 バケモノがくる」を製作。──ワンワンパ●ック……!? そんな謎の単語が、約30年の時を超えて記者の脳裏をかすったが、この展示会においては、かのような邪推は無粋である。田口さんは同作を「アニマルパニックシューティングゲーム。ある家族の家にバケモノが住みつこうとしていた。犬(A之介)のあなたは吠えて、そのバケモノを追い払うのだ。 地獄? そう、バケモノに触れると地獄へ。」との解説を記している。
そのほか、本当にリアリティのある作品から、「これ5秒くらいでデザインしたんじゃないの!?」と思わず勘ぐってしまうようなアート作品まで多彩。
最後に紹介したいのがこの作品。イタリア人ゲームデザイナーVittorio Giorgiさんが手がけた「BURABARE」(ブラバレ)だ。解説を見ると「BURABARE(ブラジャーバレーボール)のバレーボール試合を楽しめ!。。。ブラジャー姿のままで!このゲームは、左手のみでもプレイ出来るようになむています。SELECTボタンを押すと、カーソルの移動方向が左に90度回転した形になりますので、右図のように縦にコントローラを持ってプレイして下さい。その際、右手は自由に使えます」(原文ママ)。
「右手は自由に使えます」──なんか聞いたことがある言い回しだ。ソフトのパッケージはコピー用紙を上貼りしたような感じで、よく見ると下面にうっすら「フィーゴサッカー」の文字。はて、そんなファミコンソフトあっただろうか。
過去、スーファミに「ジーコサッカー」というのはあった。そう、クソゲーファンに愛されたソフトで、定価9,800円のところ10円で大量に叩き売られていたともいわれた伝説の作品。そして「改造ソフト」の元にもなったソフトとしても有名だ。「SM調教師瞳」という中身が全く違うエロゲの基盤に差し替えられ、タイトルステッカーの上には粗悪なシールが貼られ、秘密裏に流通していたのだ。それと大変酷似している。
しかも「SM調教師瞳」の説明書にも、「右手は自由に使えます」の表記があった。そうか、あれのパロディだ!! と点と点が線になった時、記者は小刻みに震え始めた。
Vittorio Giorgiさんはイタリア人ながら、その事実を知っていた。一連の顛末をこのパッケージで再現するため、背景にはジーコサッカーならぬフィーゴサッカー(※フィーゴはイタリアでも活躍した選手)としてネーミング、上にいかにも非正規商品らしいコピー用紙調でデザインを施したのだ。さすがアーティストである。
もっと例を挙げたいが、枚挙に暇なし。
総じていえることは、このファミカセのパッケージが「小さなキャンバス」になっているということだ。ファミコン世代なら覚えている感覚だと思うが、その昔は、パッケージイラストだけを見て、ゲームのストーリーやゲーム内容を勝手に妄想し、早くプレイしたいとワクワクした。そんな童心が蘇ってきたのは、記者だけではあるまい。
イベント概要
わたしのファミカセ展公式サイト
期間 4月27日〜5月13日(日)迄
料金 入場無料
場所 中野区中野6-21-1 METEOR(メテオ)B1F ※JR中野駅北口出て右折、線路沿いを徒歩5〜6分ほど