10月1日(日)東京・中野「SF gallery.」で開催されていた造形作家・池内啓人(ひろと)氏の個展「READY MADE」(レディメイド)が閉幕した。約2週間の展示だったが、いま注目のクリエーター・池内氏の作品を見ようと会場には連日多くの来場者が訪れていた。
今回の個展「READY MADE」は「既製品」を意味する言葉。これまでの池内氏が作り上げてきた作品を代弁するキーワードだ。池内氏は、既製品同士を組み合わせて、加工し、彩色し、一つの作品をつくるクリエーターなのだ。
近未来感があるヘッドセットは、既製品のヘッドフォンと防塵マスクを用意するところから作業が始まっている。一見、スペースシャトル打ち上げ基地に見える作品は、使わなくなった天体望遠鏡を利用している。そう、完全オリジナルに見えるこれらの作品だが、すべてのベースには既製品があるのだ。
作品のテーマは「レトロフューチャー」。一言でいえば「昔の人が考えていた未来」ということだろうか。サイバー感、SF感があるけれど、どことなくアナログな一面も残っているリアルさがある。決してビビットで派手なものではなく、くすんでいて、無光沢、寂しさすら感じる作風は実にリアリティがある。
むやみに商品を購入して作品に仕上げ続けているわけではない。当然新品もあるが、マウス、USBメモリー、ポラロイドカメラ、ピアニカなど、大半は「不要になった」「時代遅れ」の電子機器、家電などがベースになっている。そこに、プラモデルのパーツを付けたり、別カラーに彩色したりして、独特の世界観がある作品を作り上げている。
「ある時、『池内さんの作品は現代版の生け花みたいだね。もともとそこに存在していた物を違う様に見せ、作品にしている』と感想を伝えてくれた方がいらっしゃいました。私もあぁ、なるほど、と思ったのですが、生け花と違うのは、すでに使用されなくなった物(不要品)を作品のテーマにすることが多いことですかね」(池内氏)
たしかにスキーブーツ、古いPCのハード、旧式のマウスなど、通常なら捨ててしまうものを、池内氏は作品として蘇らせている。そこが凄い。ちなみに作品に付け加えるパーツは、秋葉原のプラモショップなどで買っているそうだ。「イエサブとかでプラモのパーツを眺めていると、作品の制作意欲が高まるんです。ああ、このパーツとこの家電は合いそうだなぁ、とか(笑)」(池内氏)。
とにかく池内氏の作品には驚かされる物ばかりだが、池内さんは根っからのオタク。「いまでもアキバはよくいく場所。学生時代は『To Heart』とか『ファイブスター物語』とかが大好きでした。あとはスターウォーズとか。自分の作品にもそんな大好きな漫画やアニメを見て感化された部分がでているかもしれませんね」と話す。
2015年以降はヘッドフォンをベースにしたヘッドセットの作品づくりに重きを置いている。こちらもどことなくレトロで未来感がある「レトロフューチャー」がテーマ。
残念ながら個展は終了してしまったが、こんなに時間をかけて一点一点を凝視せざる得ない作品展は過去なかった。次回開催は未定だが、気になる方は池内氏のTwitterを追いかけて欲しい。
クリエーター紹介
池内啓人(いけうち・ひろと)
1990年生まれ、多摩美術大学卒。ジオラマ造形作家。
公式HP http://ikeuchi-products.tumblr.com/
公式Twitter @ik_products
会場紹介
東京・中野「SF DEPT.」